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目的別の栄養

特定のライフスタイルや健康の問題を持つ犬・猫に固有の栄養要件に関する有用な情報。

キーメッセージ


  • 栄養学的介入は慢性腸症の多くの犬に有効ですが、慢性腸症の食事管理に対する単一の食事やアプローチがすべての犬に奏功するというわけではありません。1,16,17,19 一般的な食事療法には次のようなものがあります。4,5,17,19,21─23 
    • 高消化性低残渣(低繊維質)のフード
    • 加水分解または新奇​タンパク質の材料を使用した食事
    • アミノ酸ベースのフード(完全アミノ酸食)
    • 低脂肪食
    • 高繊維のフード
  • 下痢の原因部位が小腸性、大腸性、あるいは混合性として同定​することは、適切な食事療を選択する上での指針として役立ちます。​
  • 過去の研究によると、慢性的な特発性消化器症状を持つ犬には、消化吸収の良い市販の消化器用療法食の使用が支持されており第一選択の食事として推奨されています。17,24 消化器系の食事に反応しない犬には、除去食(加水分解タンパク、アミノ酸ベース、新奇タンパクのフード)を使用する必要があります。これは無作為化比較試験でも有用性が証明されています。​17,19,21
  • 食事の変更に対する臨床的反応は一般的に急速で、食事の変更後 1~2 週間以内に起こります。16,17,25 
    • 慢性腸症のすべての犬が、2 週間以内に特定の食事に反応するわけではありません。最初の除去食試験で反応がなく、犬の健康状態が安定している場合、抗菌薬の反応性試験や腸内生検に進む前に、別のフード(新規タンパク質や加水分解タンパク質を使用したフードなど)を用いた 2 回目の除去食試験が有効となる場合があります。26

  • 食事の選択の際に、考慮すべき要素として、​消化のしやすさ、カロリー、タンパク質、脂肪、繊維、コバラミン、ビタミン D、マグネシウムの含有量など​があります。27-29 しかし、すべての患者にとってこれらの栄養素が全部​重要とは限りません。
  • 食べ物を消化し、栄養素、特にタンパク質と脂肪を吸収する消化管の能力が低下している可能性がある場合には、​消化の良い食事を選ぶことが​重要です。27,28 
    • 高消化性のフード​は栄養素の吸収性​を改善し、未消化の食物に関連する合併症(浸透圧性下痢や腸内細菌叢​の変化など)を最小限に抑えることができます。
  • 高消化性タンパク質は、消化機能が低下した犬でも​充分な必須アミノ酸を吸収できるようにします。特に食物による有害反応が疑われる場合、食事性タンパク源は臨床症状の管理において​非常に重要となる場合があります。28 
  • 食欲がない、または消化機能が低下している犬には、カロリー密度の高い食事を与えることで、食事の量を減らすことができます。28 しかし、膵炎やリンパ管拡張症の犬には、食事中の​脂肪制限が有効です。30 このような犬では、脂肪の一部を中鎖脂肪酸に置き換えることが有効な場合があります。
    • 脂肪の消化や吸収性​が悪くなると、未消化のまま残った脂肪​が大腸に入り、腸内細菌叢バランス​の異常、上皮細胞の損傷、大腸での粘液分泌​を誘発する可能性があります。 
    • 食事で摂取するオメガ 3 脂肪酸とオメガ 6 脂肪酸の比率を変更すると、炎症誘発性代謝産物の産生が抑制され、​腸の炎症を調節してくれる​可能性があります。30,31 
  • 慢性腸症の犬には、さまざまな量と種類の食物繊維が推奨されています。
    • 嘔吐や小腸性​の下痢がある場合、胃からの排出の遅延を予防し、栄養の吸収性​を改善するために、従来から食物繊維の少ないフードが​推奨されてきました。
    • 大腸性​の下痢が認められる犬には、テネスムス(しぶり)​の軽減と大腸の粘膜修復を助けるために、水溶性と不溶性の両方の繊維​を含む高繊維食が適応される場合があります。28
  • プロバイオティクスの中でも​、特に免疫系を調節したり、抗炎症作用があることが示されているものは、慢性腸症の犬にとって、多面的な治療法の一部として有効な場合があります。32 
    • プロバイオティクスの持つ宿主への作用は、菌株により異なります。どのプロバイオティクスを用いるかは、​期待される目標に基づいて選択する必要があります。

  • さらなる​嘔吐や下痢を誘発しないよう、食事の形状​や回数は、疑われる疾患や問題のある消化管の部位​によって調整する​必要があります。
    • 食物の形状(例:液体、缶詰、ドライフード​)は、胃が空になるまでの時間に影響します。液体が最も早く胃から排出され、次いで缶詰、最後にドライフードの順番と​なります。
    • ウェットフードの水分量を増やしたり、ドライフードにぬるま湯​を加えたりすることで、嗜好性を高めつつ、簡単な水分補給を行う​ことができます。
  • 慢性腸症の犬は、消化吸収能力​を改善し、嘔吐や下痢などの反応を最小限に抑えるために、最初は少量で頻回の食事(例えば 1 日 3~6 食)が推奨されています。​28,29 
    • 消化器症状​が治まれば、7 日間かけて徐々に普段の食事に戻すことができます。
    • 疑われる基礎疾患によっては、療法食の継続が必要な場合もあります。